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Musica Argentina Brasileira All Frontiers


by sh2o

Carlos Cutaia

元Pescado Rabioso、元La Máquina de Hacer Pájarosのベテラン鍵盤奏者Carlos Cutaiaの最新作『Sensación Melancólica』と前作『Para la guerra del tango』。これがすんばらしいタンゴJAZZ!凡百のタンゴ風味のJAZZやフューチャー・タンゴなんか問題にしない円熟と貪欲さが見事な斬新さを生み出している。

a0023718_1212359.jpgまずは2005年のカルロス・ガルデル賞"Tango - Nuevas formas"部門の受賞作『Para la guerra del tango』。Carlosのピアノ、ドラムスにDaniel "Pipi" Piazzolla、ベースはCarlosの息子Ezequiel Cutaiaというトリオ編成に、今もっとも評判の高いタンゴシンガーLiliana Barriosが全編に渡り参加している。Carlosはスピネッタやガルシアとの活動後はシアターやフィルムの仕事がメインであったようで、そうした情景描写に秀でた完成が、単なる「試み」としての音楽製作だけに終わらない、一枚の作品としての完成度を高めている。またLilianaの力強く情念深い声が、演奏のスタイリッシュさとうまく溶け合い、絶妙の体感温(音?)度を感じさせてくれる。Carlosのピアノタッチは力まず前のめりになりすぎず、輪郭のはっきりとした潮の満ち引きを思わせる演奏。4曲目の""が特に素晴らしい。ここれのLilianaの歌とCarlosのピアノのコラボレーションは氷に注がれた炎。内に秘めたドラマチックさがいったん火のついた快感をさらに高める。

a0023718_1152774.jpgそして最新作『Sensación Melancólica』。前作同様のピアノトリオにバンドネオンAlejandro Guerschberg、ヴァイオリンLuis Roggeroを加えたキンテート編成。Liliana Barriosも数曲で参加。そしてCarlosのもう一人の息子Lucas Cutaiaも音響/プログラミングで参加している。EzequielとLucasはGordöloco TrioのドラマーRodrigo Gómezと一緒にOPEN 24というFUNKROCKPUNKユニットで活動している。このアルバムに感じるJam Band風味や最近流行のJAZZピアノトリオ的な演奏のにおいを感じるのは息子たちの影響によるものだろうか。それにしてもCarlosのピアノは変幻自在というか味わい深い。Daniel "Pipi" Piazzollaのドラムスはどこをとっても"Pipi"の演奏でその演奏はどこか押し相撲の力士のように感じる。猪突猛進華麗なる電車道かと思えば、突然目の前の視界が消え去る突き落とし。「大瀑布」って感じ~。アルバム終盤の2曲でLucas Cutaiaのエレクトロ・タンゴを意識したアレンジをバックにした、Daniel Melingoがその歌声が聴ける。そしてRichard Nantのトランペットが時の流のように儚く流れていく。小手先の「未来」なんてサヨウナラ。アニメーションや特撮ではない、靴先をかすめる未来の一瞬がはっきりと見える。
タイトル曲はCarlos自らのオーケストラのために1984年に書かれたものらしい。また他のインスト小曲はTV番組やフィルムのために書かれたもののようだ。

Carlosのような大ベテランが第一線とは言えないにしても、未だ自分の音楽を貪欲に作り上げていこうとする姿勢に感服敬愛するとともに、某国の音楽シーンに暗澹とする。
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by sh2o | 2006-07-27 11:48 | Argentina