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by sh2o

倉地久美夫 『太陽のお正月』

a0023718_19124967.jpgゴールデンウィークに大阪で、短い時間ではあったが倉地久美夫のソロライブを見た身にあっては、このライブ盤『太陽のお正月』はその日の時間的な物足りなさを消化する続編を聴いている気分にさせてくれた。1995年の録音であるというすでに約12年もの歳月がわかっていてもなお、その感覚は変わらない。それはすでに当時から倉地久美夫の世界が確固としてあったことの証であるだろうし、何より倉地久美夫の世界をもっと欲している渇きの証でもある。

ソロでの演奏と、菊地成孔外山明とのトリオでの演奏を収録。菊地、外山との録音は『うわさのバッファロー』『I heard the ground sing』でも聴くことができ、三人の演奏の違い、呼吸を聴き比べるのも面白いだろうが、まずは倉地にどっぷり嵌りたい。

「二刀流」
「8ミリ監督」倉地のソロ演奏でどっぷり満足。まるでスクリーントーンを使わずにペンのみで背景を描いていくような緻密でいて時に空白も厭わない抽象的なギターワークに惚れ惚れする。それと対比するような朴訥としたMCにほわ~っと微笑をうかべてしまうのが、蕎麦屋で読む四コマ漫画週刊誌のような味わいで絶妙。それは彼の声、言葉の世界についても同じくいえることだ。まぁそれは詩のボクシングを実際に見た人ならすでに承知のことだろう。

倉地の詩の世界は、おそらく実生活の断片を記憶の襞の中で回想するが故の時間と空間の二重写しかまたは絞り模様。その世界は所謂私小説であっても、古井由吉のような針の穴から見る靄がかった景色のような居心地の悪さはない。やはり漫画やフィルムのような明快な景色が広がっているのが倉地の世界の特徴だろうか。彼の詩の世界の感じ方は人それぞれだろうが、目の前に広がる景色はほぼ一定ではないだろうか。

あ~倉地久美夫を「誰?なんだろう??」と思い、釘付けになったギターそして飲み込まれるように飛び出す彼の声を咀嚼した、いや咀嚼された瞬間を忘れない。それを思い起こさせてくれる素晴らしいライブ盤。
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by sh2o | 2007-05-15 18:59 | 倉地久美夫