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Musica Argentina Brasileira All Frontiers


by sh2o

Enzo Favata "No Man's Land"

Enzo Favata \"No Man\'s Land\"_a0023718_14144286.jpg島から街へ。

サルデーニャのサックス奏者Enzo Favataの2005年リリースの最新譜『No Man’s Land』
2004年リリースの2枚組アルバム『CROSSING』が今までの活動の集大成的なベストアルバムだったので今後の展開が気になるところだったが、不覚にもこの『No Man’s Land』の発売を見逃していた!そういえば『CROSSING』の中の名曲名演奏"Patagonia Express"には『No Man’s Land』からの選曲と記載されているので、その時にはもうこのアルバムは完成していたのだろう。

『No Man’s Land』はイタリアのJAZZレーベルSPLASCHからのリリース。そして1曲目は"Patagonia Express"だ。この夢見るような展開はなんなのだろう。サルデーニャから足を踏み出し世界を巡る列車。これはEnzo Favata達の新しい旅立ちのテーマソングなのだろう。やはりMarcello Paghinのエレキギター、それに纏いつく星の輝きのようなDaniele di Bonaventuraのピアノの美しさ。冴えている。この二人はパーカッションのAlfredo LavianoらとBand’Unionというプトジェクトをやているよなので気が合うのだろう。2曲目はPeghinの曲"DUE + DUE"。これがまたPeghinのエレキギターをフューチャーしたFree&Impro系の香りのするJAZZ。今までの「サルデーニャ」という括りでのEnzo Favataのアルバムの中には無かったタイプの曲だ。レーベルがJAZZレーベルであるSPLASCHということもあるだろうが、この辺が新しいEnzo Favataの真骨頂なのだろうか。どうもなかなか馴染めない。Peghinのペンによる曲というのも意外だ。ちなみにPeghinはこのアルバム全曲でエレキ・ギターを弾いておりいつもの10弦アコギは無しだ。4曲目の”The Edge”もそんなタイプの曲。ACTレーベルあたりのワールドJAZZのドシャメシャ感に相通ずるものがある。5曲目は『CROSSING』にも参加していたクロアチア出身のJazzFusionギタリストElvis Stanicの曲だ。

「サルデーニャ」という音楽に限界を感じたのか飽きたのか、それはわからない。確かに長く活動を続けていれば、しかも同じメンバーで長く、となればおのずとそこにはマンネリやワンパターンは生まれてくる。実際Enzo達もそうだった。今回のアプローチはその流れの中から生まれてきたものなのだろう。それを証言するかのように、今までの公式サイトであったVoyage en Sardaigneは更新されておらず、Jana Projectのサイトが新たに立ち上げられている。そこには「music in sardina」と一緒に「world jazz」「tradition in translation」の言葉が並んでいる。確かにMarcello Peghinのエレキは真骨頂であり魅力的。Daniele di Bnaventuraのピアノは一番生き生きと輝いている。しかし肝心のリーダーであるEnzo Favataのサックスはどうなのだろう?どうもあまり目立たず凡庸な大海に沈んでいるように思われてならない。Peghinの手によるサルデーニャテイストの感じられる曲"Elegiaco"でのEnzoが一番魅力的だ。いずれにしても初っ端の"Pataginia Express"と締めの"Second Song"により、このアルバムの印象派素晴らしものになっている。Marcelloのエレキギターにも満足だ。それでもマンネリでもワンパターンでもいいからEnzoのいつものサルデーニャ節をもっと堪能したかった。

新たな旅に出たEnzo達。その出発に心から祝福を送るし、その行き先から届けられる音楽を楽しみにしている。でも、遠慮することないよEnzo。いつでも帰ってきて僕たちに聴かせてくれていいよ。
by sh2o | 2006-12-24 14:15 | All Frontiers